ブランディングの方法と効果

「ブランディング」とは簡単に言えば「ブランド」を作ることであり、「ブランド」とは競合と区別された”考え・理念”や”価値・意義”を認知させるものです。

なので、ロゴやデザインだけを整えるのではなく、企業が自社の強みを明確化し、競合と区別されて共感してもらえる仕組みづくりであるブランド戦略が欠かせません。

これからブランド構築を考えている方は是非、参考にしていただければと思います。

1. よくあるブランディングの課題

”技術力はあるのに評価されない”または、”使ってもらえば・食べてもらえば分かるのに”や”広告費をかけても反応が薄い”などの悩みを抱えてる方も多いのではないでしょうか。

製品やサービスに自信があるだけに、もどかしい思いをされてる方が多いと思います。

”どうすれば解決するか”のまえに”悩みや課題がどうして起きるのか”を、整理してみたいと思います。

以下に4つの要因を挙げてみます。

①競合との差別化ポイントが不明確

自社の商品やサービスが他社とどこで異なるのかを明文化できず、顧客側に選ぶ理由が伝わらないため、結果的に価格でしか比較されなくなります。

②伝えたいメッセージの一貫性が欠如

Web・SNS・パンフレットなど各チャネルでトーンやデザインがバラバラになり、ブランドとしての統一感が失われ、顧客の記憶に残りにくくなります。

③顧客ニーズと自社の強みがミスマッチ

自社では技術や品質をアピールしている一方で、顧客が求める価値やベネフィットに結びついていないため、購買動機が喚起されません。

④価格競争に巻き込まれている

製品やサービスの本質的な価値よりも「安さ」だけで判断されると、利益率の低い受注が増え、企業の持続可能性を損ないます。

他にも要因はあるかもしれませんが、上記4つの中にひとつでも当てはまるものがあれば是非一度「自社の強みは何か」「顧客ニーズは何か」「伝えるべきメッセージは何か」を整理してみてください。


2. ブランディングで見えてくる変化

誤解されがちですが、ブランディングは「見た目を良くする」だけではありません。

ブランディングは簡単にいえば、企業の存在意義と顧客が得たい価値を合わせて選ばれる仕組みを作ることです。

ブランディングを行うことで得られる変化やメリットの一例を挙げてみます。

選ぶ理由が鮮明化

競合と比較しても違いがすぐに理解できるように、自社の強みや価値を明確にコミュニケーションすることで、顧客は直感的に選ぶ理由を感じられます。

価格競争からの脱却

同じ価値の比較になると価格が安い方が選ばれるのは当然です。”競合との差別化”がされ、”差別ポイントが顧客ニーズに合致する”ことで価値にたいして適切な価格で販売ができます。

顧客ロイヤルティの向上

ブランドの理念やストーリーに共感した顧客は繰り返し利用し、口コミや紹介を生み出すことで、長期的な関係性を築きます。

発信の一貫性確保

ブランドのコアメッセージやビジュアル要素を定めることで、どのチャネルからコンタクトしても同じ体験ができ、信頼感が向上します。

ブランディングを行うことで顧客側から選ばれるようになり、企業の活動が顧客満足につながる好循環が生まれます。今回はインナーブランディングには触れませんが、働く従業員もブランド価値が上がりファンが増えることはモチベーションアップと働き甲斐にもつながると思います。

ただし、ブランディングは労力も掛かりすぐに結果が見えるものではないため、長期的視点で考え取り組む必要があります。


3. ブランディング強化の3つのポイント

具体的なブランド構築の話に行く前に、大事なポイントを確認します。

①ブランドの「核」を見つける

創業の背景や企業理念を深掘りし、その中から他社にはない価値観や強みを抽出する作業です。ここを明確にしないと、後のメッセージ設計がぶれてしまいます。

②顧客目線で価値を翻訳する

自社の強みを機能的な特徴として語るだけでなく、顧客が実際にどんなメリットや感情の変化を得られるのかを言語化し、ストーリーとして届けることが大切です。

③一貫した発信と体験設計

Webサイトや広告、実店舗など、顧客が接触するすべてのポイントで同じトーン、ビジュアル、メッセージを貫くことで、ブランドの信頼性を高めます。

核を明確にしないままに進めてしまうとどこかで行き詰ったり、矛盾が生まれる原因になります。また顧客目線を欠いてしまうと結果的に選ばれるブランドにはならないので注意が必要です。


4. ブランド構築の5ステップ

ブランド構築のステップを載せますが、各分析には適したフレームワークを使用したり、必要に応じて現状を正しく知るためのデータを得ることで精度を上げることができます。

ステップ内容アウトプット
① 現状分析(診断)市場・競合・顧客・自社を多角的に評価課題と機会のリスト
② 課題抽出と機会特定データに基づき阻害要因と成長領域を整理戦略的フォーカス領域
③ アイデンティティ定義パーパス/ミッション/ビジョン/バリュー等を設計ブランド設計書(骨子)
④ 発信戦略とコミュニケーション設計メッセージ、媒体、体験プロセスを具体化ブランドガイドライン/コンテンツプラン
⑤ 実行・運用・定点検証実施後に指標を計測し、PDCAで改善KPIレポート、改善プラン

4.1 現状分析(ブランド診断)

市場分析:規模・成長性・トレンドを把握

フレームワーク例概要
PEST分析政治・経済・社会・技術の外部環境を整理し、市場のマクロトレンドを把握
5 Forces(ファイブフォース)分析業界の競争構造を分析し、市場の魅力度や参入障壁を評価
市場ライフサイクル分析市場が導入期・成長期・成熟期・衰退期のどこにあるかを判断し、戦略の方向性を定める

競合分析:ポジションとメッセージの差異を抽出

フレームワーク例概要
ポジショニングマップ競合の特徴を軸に配置し、自社の差別化ポイントを視覚化
SWOT分析(競合視点)競合の強み・弱み・機会・脅威を整理し、戦略的な隙間を探る
ブランド・アイデンティティ・プリズム(競合比較)競合ブランドの個性やメッセージを6つの視点で分析し、自社との違いを明確化

顧客分析:購買動機やブランド印象の定量・定性調査

フレームワーク例概要
カスタマージャーニーマップ顧客の行動・感情・接点を時系列で整理し、ブランド体験を可視化
セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)顧客層を分類し、最適なターゲットと訴求軸を設定
ジョブ理論(Jobs to be Done)顧客が「達成したいこと」に着目し、ブランドの役割を再定義

自社分析:強み、価値観、既存の資産を洗い出し

フレームワーク例概要
VRIO分析自社資源が競争優位につながるかを「価値・希少性・模倣困難性・組織」の観点で評価
バリューチェーン分析自社の活動を分解し、価値創出の源泉と改善余地を特定
ブランド・アイデンティティ・プリズム(自社視点)自社ブランドの本質を6つの要素(外面・内面)で構造化し、核となる価値を明確化

4.2課題抽出と機会特定

  • 課題例:認知度不足/差別化不十分/タッチポイントの不一致
  • 機会例:未開拓市場/デジタル活用/SDGs訴求

4.3 ブランドアイデンティティ定義

  1. ブランドパーパス:存在意義
  2. ビジョン:将来像
  3. ミッション:役割・行動指針
  4. バリュー:価値観
  5. パーソナリティ:雰囲気・性格
  6. プロミス:顧客への約束
  7. USP:独自の強み

4.4 発信戦略と体験設計

  • ワークショップやブランドアーキタイプ分析で社内合意形成
  • ペルソナ設計を基に、ストーリーとビジュアルを具体化

4.5 実行・運用・定点検証

  • KPI例:ブランド認知度、NPS(Net Promoter Score)、顧客生涯価値(CLV)
  • 定期的なブランド診断とガイドライン更新

成功のポイント

  • 外向き(顧客視点)と内向き(自社視点)の両立 顧客が求める価値と、自社が大切にする理念を両輪として組み合わせることで、マーケットに適応しながらも自社らしさを失わないブランドを形成できます。
  • 一貫性 どの接点でも同じメッセージやデザインが使われることで、顧客がブランドを認識しやすくなり、信頼の蓄積につながります。
  • 進化可能性 市場環境や顧客ニーズの変化に応じてブランドの要素を見直し、柔軟にアップデートできる設計を取り入れておくことが重要です。
  • ストーリー性 企業や商品の歴史、創業者の背景などをストーリーとしてまとめることで、顧客の感情を動かし、ブランドに対する愛着を生み出します。

まとめ

ブランド構築は「事実を知る → 課題と機会を整理 → 自社の核を定義 → 一貫した発信を設計 → PDCAで改善」のサイクルで進めることが成功の鍵です。

土台が固まれば、あらゆる施策(ロゴ/広告/SNS/店舗体験)が相乗効果を生み、価格以外の評価軸で選ばれる強い企業へと成長します。

次のステップとして、まずは社内ワークショップを開催し、ブランドコアの言語化から始めましょう。

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